波多野誼余夫氏死去

認知科学者の波多野誼余夫さんが1月31日になくなったとのこと・・・合掌.
知的好奇心」,「知力と学力」を読んだことがあることと,やはり名前が特徴的なので記憶に残っています.

認知科学者といって思い出すのは,「誰のためのデザイン?」,「人を賢くする道具」のDonald Norman.2006年のベンジャミン・フランクリンメダル(in Computer and Cognitive Science)を受賞したそうです.


引用(朝日新聞5/1夕刊)

 ヒトの心を解明する認知科学に取り組んだのは,児童心理学者として活躍した波多野完治,勤子(いそこ)夫妻の次男に生まれた運命に導かれてのことだったか。名前のギヨオは,父が親しんだ哲学者で教育家のギュイヨーにちなむ。母のベストセラー「少年期」(光文社)にも登場する。
 先輩に「父親ほど偉くなれる見込みはまずない」と忠告を受けながら,東京大で教育心理学を専攻した。そのころから知る東洋(あずまひろし)・東大名誉教授は「群れず,わが道を行くというタイプ。ことの本質をつかむ能力は抜群でした」という。
 獨協大や慶応大の教授として,日本文化に根ざしつつも世界に通じる研究に挑戦した。そろばんの熟練者が,あたかもそろばんを頭の中に持っているかのように数字を記憶できるのはなぜか。その仕組みを説明してみせるなど,興味深い業績を積み上げた。同時に,千葉大教授の稲垣佳世子さんと書いた「人はいかにして学ぶか」(中公新書)などの啓蒙書は,昨今の教育論争を見越していたようだ。
 認知科学は,心理学,情報科学脳科学などと関連し,そのすべてに好奇心を持った。「話すと必ず新しいことが見つかる。1足す1は2以上,でした」と高橋惠子・聖心女子大教授は話す。
 「毎週のように外国の研究者が訪ねてきた時期がありました」と梅田聡・慶応大助教授。気に入った研究に触れて「うんうん」とうれしそうにうなずく姿に,ほれ込んだ人が多かった。海外留学の道を選ばなかったのに,海外の研究者と深くつきあうすべを心得ていた。
 国内では父を越えられないと承知しながら「英語圏の心理学者の間では,ハタノといえばまずギヨオのことなのです」と公言するプライドも見せた。
 6年ほど前から患ったが,病気をものともせず,死の2日前まで仲間と研究話に花を咲かせた。「弱音を吐く人ではなかったから・・・・・・」と妻の梗子(きょうこ)さんは語った。             (内村直之)